ろくでなし子事件がMMD文化を潰す
- 2014/07/15
- 19:02
女性器の3Dスキャンデータを他者に譲渡して逮捕された芸術家の件について、フリーアナウンサーの長谷川豊氏が詳しく語っていた。
以下、主に長谷川氏のブログ記事(「ろくでなし子さんの報道 完全な情報操作です!」)を引用しつつ話を進める。
まず寡聞にして私はろくでなし子氏の活動を知らなかったのだが、長谷川氏によれば彼女はこういった観点から女性器をモチーフにした芸術作品を制作していたらしい。
「日本人はあまりにも女性器に対して偏見を持ち過ぎているのではないか?」
(中略)
そもそも女性器をやおら神聖化したり、「卑猥の対象」、「わいせつの対象」とすることって、そもそも「男性側からだけの意見」であって、度を越した特別視 は逆に女性器の正しい知識の啓蒙を阻害しているんじゃないか、と。そういう主張をずっといろんな雑誌や自身のフェイスブックなどで呼びかけてきた人でし た。
その活動の一環として自身の女性器の3Dデータを使用したボートを製作することにしたそうだ。
ボートという題材を選んだのは女性器をジョーク的に扱うことで、より身近にその存在を感じてもらい忌避感を無くすためだったと言う。
その制作費を手に入れるために募金を集め、その募金提供者に対して女性器の3Dデータを提供したことが今回の逮捕に繋がった。
しかし、その提供についてもただ意味もなくお礼の意味を籠めて提供したのではない。
「このデータを使って皆さんも何か女性器アイテムを作るなど、女性器をあまり特別視しすぎないで、もう少し身近に感じられるような、そんな手助けをして欲しい」
そのデータを使って他者が作品などを作ることを推奨していたようだ。
女性器をこういった目的に扱うことに対して、賛同する人も拒否感を抱く人もいるだろう。
だが正直な話、今回のそれは本題ではないと私は思っている。
やはり重要なのは『3Dデータは猥褻物として扱われるのか』ということだ。
今回はスキャナーによって読み取ったものだったが、果たしてそこに打ち込んで作った3Dデータとの違いはどの程度あるのだろうか。
ろくでなし子氏が自分の性器のスキャンデータではなく、打ち込みで作った性器の3Dデータを配布していた場合は逮捕されなかったのだろうか。
共同通信の記事によれば、
警察は3Dスキャナーのデータだからではなく、3Dプリンターで出力できるから駄目だと言っている。
もっと言えば「いやらしい目的に使えるから駄目」だと。
3DCGモデルがMMDなどによって、専門家でなくても使用できる身近なコンテンツとなりつつある現在、今回の逮捕がそういった文化を縮小させる原因になってしまうのではないかという懸念を感じざる得ない。
下手をすると全裸の女性の3Dデータを、エロ目的ではなくモデル素体として配布しても逮捕される時代が来るのではないか。
個人的には文化的な側面から、ろくでなし子氏にはぜひ裁判などで勝利してもらいたい気持ちが強い。
だがその点において長谷川氏がブログ記事でも憤っているように、今回の報道では恣意的な言葉を多様していることが問題となる。
・「自称芸術家」?怪しいぃぃ~~。
・自身の性器をデータ送信?変態だね!
・どーせ、自分の変態データを送って金儲けでもしてたんだろ!
恐らく、日本人の99%の人がそう感じたでしょう。
実際、この事件にさして興味を覚えない人達はこういった印象を受けてしまっただろう。
裁判官も人間である以上、世論に逆らった判決を下すことは難しい。
特にこういった過去に前例がない犯罪を裁く場合には特にそれが顕著となる。
そして一般的に「世論」というものを知るための媒体は、テレビのニュースや新聞の記事ということになるのだ。
そういう意味では、もしこれが警察の情報操作であるというのなら、完全にその目論見は成功してしまっている。
そしてその裁判の判決が前例となり、3DCGの冬の時代が来るのが私は恐ろしい。
Phot bay: bert boerland
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