捕まった「まんだらけ」万引き犯の恐ろしき間抜けさ
- 2014/08/19
- 14:54
このブログでは取り上げて来なかったが、中古品販売店「まんだらけ」から「鉄人28号」のブリキ製玩具が盗まれるという事件があった。
その犯人が8月19日に逮捕されたようなのだけれど、容疑者の行動の間抜けさが気になって仕方ない。
そもそもこの事件は8月4日17時頃に東京にある「まんだらけ」中野店から、展示してあった「鉄人28号」のブリキ製玩具(販売価格27万円)が盗まれたことから始まる。
言っては悪いが、ここまではよくある窃盗事件だった。
それが風向きが変わったのは「まんだらけ」が5日に公式サイトにて、監視カメラに映った男の写真を公開したことによる。
画像の通り、容疑者の顔にはモザイクがかけられており、「まんだらけ」側は一週間以内に盗んだ商品を返却しなければ素顔を公開すると宣言した。
これが世間の注目を集め、テレビのニュースでもこの事件について特集が組まれるなどした。
「まんだらけ」のこの行動は賛否が分かれ、マスコミなどでは法律に抵触する懸念も上がっていた。
ネットのトラブルに詳しい甲南大法科大学院の園田寿教授(刑法)は「刑法の規定では、正当な債権を取り返す場合でも脅迫すれば脅迫罪になる。今回のケースは、現時点で恐喝未遂に当たる」と指摘する。また、写真の公開は万引の事実を公にすることであり、刑法の名誉毀損罪が成立する可能性もあるという。
5日の段階で「まんだらけ」から被害届を受け取り捜査していた警視庁中野署は、同社に対して「捜査に支障が出る恐れがある」として顔写真の公開取りやめを申し入れている。
だが「まんだらけ」側は報道関係者のインタビューに対して、あくまで画像の公開は行うとの意志をアピールしている。
しかし結局、結局期限の12日を過ぎても顔写真が公開されることはなかった。
中止した理由について「まんだらけ」はこう説明している。
公開取りやめの理由について、同社はHPに掲載された文書で「報道陣の方々が(中野区の)店舗のあるビルの入り口付近や店舗周りに集まって来られていて、とても犯人が入って来られる状況にはなかった」と説明した。
そのうえで、「犯人の身内と思わしき方より『8時(20時)までに返せばいいのだろうか』という内容の電話があり、期待して待っていたのですが、どうも無理なようでした」と記した。万引被害のあった中野店が閉店した12日午後8時の時点では、人形は返却されていないという。
こうして事件は何とも不完全燃焼な形で収束し、このまま忘れ去られていくかと思われた。
だが19日、突然容疑者が任意同行されたという報道が飛び込んできた。
窃盗容疑で引っ張られたのは千葉市若葉区に住む50代のアルバイトの男性。
当初は「心当たりがない」と容疑を否認していたが、翌19日には容疑を認め逮捕されることになった。
何とも理解できないのは容疑者の行動だ。
どうやらショーケースの戸が何らかの事情で鍵が掛かっていなかったらしく、その隙をついて最初から転売目的で盗み出したらしいのだが・・・。
「ショーケースが少し開いていたので盗んでしまった。売ってお金にしようと思った」
何と男は7日に質屋に盗んだ玩具を売りに行っているのだ。
7日といえばすでにネットを中心に事件のことが話題になり始めている最中である。
しかも質屋側の防犯カメラにばっちり映っており、身分証までしっかり提示して64,000円で玩具を売ったのだそうな。
それだけではなく何と容疑者は、「まんだらけ」が警告文を出していることを「知っていた」上で売ろうとしたという。
この報道に私は顎が外れるかと思った。
まさかこの状況で玩具を質屋に持ち込むとは思わなかった。あまりにも愚かな行動だ。
コピー商品よりも厄介なのが盗品の持ち込みです。ですが、商品自体は普通なので、一目見て盗品と識別できる筈がありません。持ち込んだ顧客がそれを言うはずもありません。重要な事件があった場合には、警察から質屋の業界に通達があり、質屋の側も心がけていますが、そうでない場合、見分けるのは非常に困難です。
(中略)
実際警察は頻繁に巡回し、盗品が流出していないかを調査しています。万が一質屋が引き取った品物に盗品があれば、質屋は無条件にそれを提出する義務があります。『10.質屋のリスク』より
上記の通り、質屋には警察から盗品についての情報が流れてきている。
しかも今回はテレビなどでも大きく報道され、質屋も当然この玩具のことは知っている可能性が高い。
そんな中でノコノコと身分証まで出して売りに行くなんて、あまりにも考え付かない「大胆さ」だ。
数日前に友人と「今売ったら絶対に捕まるから、きっと犯人は盗品を暫く寝かせるつもりか、そもそも売るつもりがなくて単純に欲しかったんだろうな」って話していた自分が恥ずかしい。
容疑者が盗んだ物は大量生産品のそこ等の玩具とは訳が違うのだ。
「数が少なくて非常に珍しい」から27万円なんていう高額が付いていた。
そんな「数が少なくて非常に珍しい」物をこの状況で質屋に持ち込んだら、どうなるかちょっと考えたら分かるはずだろう。
それを話題になっていることを知りながら堂々と売り捌いた犯人の思考が異次元過ぎて、私には全く理解できない。
非常に間抜けな犯人だと思う一方で、その浅慮過ぎる行動が逆に恐ろしく感じてしまう。
《追記》 2014.8.20
時事通信の報道により逮捕までの詳しい流れが分かった。
まず逮捕された容疑者の氏名は岩間和俊氏。
5日に被害届を受けた警視庁は、都内150店舗以上の古物商に聞き込みなどを行ったのだという。
そして2日後の7日の午後には、捜査員が中野区にある別の古物商の店頭に置いてあった人形を発見している。
8月7日といえば容疑者が玩具を売ったまさにその日。
売った数時間後には、あっさりと容疑者は警察に捕捉されていたことになる。
しかし、売るにしても盗んだ「まんだらけ」と同じ中野区内で売ってしまうとは。
相変わらず容疑者の思考が分からない。
そんな容疑者が犯行に及んだ動機も取り調べによって分かりつつある。
(前略)「人形を売った金で、怪獣のフィギュアを買いたかった」と供述していることが19日、警視庁捜査3課への取材で分かった。
(中略)
同課などは19日、千葉市の同容疑者宅を家宅捜索し、犯行時に持っていたバッグなど数点を押収した。自宅には怪獣のフィギュア数十体のコレクションがあり、同容疑者は「ウルトラマンに出てくるような怪獣が好きで、人形を売った金で新しいものを買いたかった」と話しているという。
鉄人28号を売って、ウルトラマンの怪獣を集める……。
玩具のコレクションというものはある意味戦争みたいなもんで、手に入る時に手に入れておかないと後から入手するのが非常に大変になるものだと思っている。
恐らく容疑者が欲しいフィギュアが売りに出されていて、それを買うための現金を持っていなかったのだろう。
そういうことなら今回の犯行も全く理解できないものではないかもしれない。
もっとも動機は理解出来ても、その犯行そのものはあまりにも稚拙で、自分の目的しか目に入っていない。
とても論理的な思考を持つ人間の行動には思えないのが正直な感想だ。
▽参考資料▽
- 「万引犯」公開します まんだらけが警告 恐喝未遂、名誉毀損の恐れも+(1/2ページ) - MSN産経ニュース
- 犯人公開警告「やめて」と申し入れ 万引被害の「まんだらけ」に警視庁 - MSN産経ニュース
- 万引犯写真公開「中止します」 警視庁要請受けてまんだらけ 「とても犯人入ってこれず」 - MSN産経ニュース
- まんだらけ「鉄人28号」万引で逮捕へ 50代男から任意聴取 - MSN産経ニュース
- 「まんだらけ」万引き容疑、50代男を逮捕へ 警視庁:朝日新聞デジタル
- 「まんだらけ」万引き容疑、男を逮捕 6万4千円で売る:朝日新聞デジタル
- 「まんだらけ」の鉄人28号万引き事件、人形売却から容疑者浮上か - ライブドアニュース
- 10.質屋のリスク
- 時事ドットコム:「まんだらけ」万引き、50歳男逮捕=「鉄人28号」窃盗容疑-警視庁
- 時事ドットコム:「怪獣フィギュア買いたかった」=逮捕の男、鉄人28号売却金で-警視庁
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