攻撃に晒される盲導犬たちを守る方法はあるのか
- 2014/08/25
- 23:51
まず断っておくと、今回の記事では表現を「盲導犬」で統一させてもらう。
ただし盲導犬ではなく「アイメイト」と呼ぶべきだという意見を否定するわけではない。
オスカーという盲導犬がパートナーと移動中に何者かによってサバイバルナイフのような物で刺された、という事件があったそうだ。
この場合の「事件」という言葉は広義の意味ではなく、警察が本当に捜査に乗り出しているという意味での「事件」だ。
7月28日、男性とオスカーはいつものように午前11時ごろに自宅を出て、JR浦和駅から電車に乗り、県内の職場へ向かった。いつものように職場の店舗に到着すると、店長が飛んできて「それ、血じゃないの!?」と声を上げた。オスカーはいつも、他の多くのアイメイトと同様、抜け毛を散らさないようにTシャツタイプの服を着ている。その服の後端、お尻の上のあたりが真っ赤に染まっていたのだ。服をめくると、腰のあたりから流血していた。
傷口を消毒し、応急処置を施して動物病院に連れて行った。直径5ミリほどの刺し傷が500円玉大の円の中の4か所あった。大型犬の皮膚はかなり厚く、獣医師の見立てではサバイバルナイフのようなものを強く何度も突き立てなければできない傷だという。あるいは、鋭いフォークのようなもので刺したか。服に傷がなかったことから、何かに引っ掛けた“事故”ではなく、何者かがわざわざ服をめくってつけた傷であることは明白だった(同日届け出た警察も事件性を認めている)。
以前からこのような盲導犬に対する嫌がらせの話は何度も聞いたことがある。
実際に元の記事の中でもそういった事例はいくつも挙げられている。
(前略)例えば、今回の被害男性が直接知る女性ユーザーの盲導犬は、気付かないうちに額にマジックで落書きされ、女性は深い心の傷を負った。タバコの火を押し付けられたという話は「珍しくない」と、使用者や関係者は口を揃える。被害男性自身も「しっぽを踏まれる、わざと蹴られるのは日常茶飯事」と訴える。かつて白杖で歩いていた時には、若者のグループに腕を捕まれ、ツバを吐きかけられたこともあったという。
一体、盲導犬を攻撃する者達は何を目的にしてこんなことをするのだろうか。
無抵抗な存在を攻撃することに喜びを覚えているのか、盲者という弱者が普段ペットなどを連れて行けない場所に犬を我が物顔で入れているのが気に入らないのか。
2002年に施行された「身体障害者補助犬法」によって、盲導犬を使う盲者の権利は国が保証するものとなっている。
- 国や地方自治体などは施設に盲導犬が入ることを拒んではならない。
- 公共交通事業者(バスや電車など)は盲導犬が乗り物に乗ることを拒んではならない。
- スーパーマーケット、デパート、ホテル、レストランなどは盲導犬の入店を拒んでならない。
- 事業主は勤務する身体障害者が盲導犬を連れて事務所などに入ることを拒まないよう努力しなければならい。
- 「住宅を管理する者」は管理する住宅に住む身体障害者が盲導犬を住宅で使用することを拒まないように努力しなければならない。
盲導犬の存在は知っていても、それに付随する権利がこれだけあることを知っている人は少ないかも知れない。
ただ人間は特権を持つ者を憎む存在だと私は思う。
盲者自身にとってはとても特権だと思えるようなことではなくても、人によっては「自分には許されないことが許される」という時点で特権だと受け取る。
そこで芽生えた攻撃性を発露させる相手として、反撃しない盲導犬はどれほど最適な存在だろうか。
彼は人間を攻撃せず、また仕事中は吠えないよう(たとえ痛みを感じても)に訓練されている。そして、その隣に立つ相手は目が見えず、こちらが何をやっても気付く可能性は低く、問題になっても即座に逃げることは容易。さらに相手に顔を見られる心配もない。
元から犯罪行為へのハードルが低い人間にとってはお膳立てが出来ているようなものだろう。
もちろん、法律や盲導犬などとは関係なく盲者をただただ「弱者」と見て攻撃を加える者もいるかもしれない。
恐らく、こういった問題はこれからも起こり続けていくだろう。
盲者が盲導犬というパートナーを頼って外へ一人で出る限り、これらの出来事は永遠に起こり続ける。
ならば、どうやってこういった被害を避けるべきかといえば、盲者が盲導犬を連れて一人で出掛けることを控えるか、周囲にいる人間が目を光らせるしかない。
しかし、盲導犬に対してはこういう注意点もある。
<盲導犬に出会ったら?>
ご存知の方も多いと思いますが、盲導犬を連れている方がいても犬には声をかけたりなでたりすることは厳禁です。盲導犬は人間が大好きです。声をかけたりなでられたりすると喜んでそちらに注目してしまい、注意散漫になって仕事を忘れて遊んでしまわないとも限らないからです。盲導犬をじっと見ることもダメだそうです。犬には知らんぷりをしなければならないそうです。(犬好きにとってはつらいことなのですが・・・。)
私も知らなかったのだが、盲導犬を触るだけではなくじっと見ることもいけないことであるようだ。
しかし、そうなると盲導犬の無事について周囲が気にかけるということも難しくなる。
本当に困難な問題だと頭を抱える。
正直、自分には解決策など思いつかない問題であり、どこかの頭の良い人が革命的方策を思い付いてくれることを期待するしかない。
《追記》 2014年8月28日
当初はサバイバルナイフのような物と報道されていた凶器。
傷口を消毒し、応急処置を施して動物病院に連れて行った。直径5ミリほどの刺し傷が500円玉大の円の中の4か所あった。大型犬の皮膚はかなり厚く、獣医師の見立てではサバイバルナイフのようなものを強く何度も突き立てなければできない傷だという。あるいは、鋭いフォークのようなもので刺したか。服に傷がなかったことから、何かに引っ掛けた“事故”ではなく、何者かがわざわざ服をめくってつけた傷であることは明白だった(同日届け出た警察も事件性を認めている)。
下記がその実際の傷の画像だが、これがサバイバルナイフによるものだとすると、あまりに傷が浅いのではないかと思っていた。
産経新聞にこの事件に対する続報があったのだが、そこで凶器はサバイバルナイフではない可能性が出てきた。
埼玉県で7月、全盲の男性(61)が連れていた盲導犬ラブラドルレトリバー「オスカー」(雄9歳)が何者かに刺されけがをした事件で、傷の形状は丸く、直径約5ミリで等間隔に四つ並んでいたことが28日、男性の関係者への取材で分かった。関係者は「フォークのようなとがったもので刺された痕だった」と証言。県警も事実を把握しており、器物損壊容疑で凶器の特定を進めている。
この関係者というのが何の関係者なのかは分からないが、傷の具合を見る限りはサバイバルナイフよりもフォークであるというのが納得できる。
しかし、恐らく外出中の駅で被害を受けたということだが、だとしたら犯人は一体何を考えてフォークを持って外をウロウロしていたのか。
また傷口は等間隔に四つに並んでいたということだが、四つ又のフォークというのはなかなか見当たらない代物だ。
凶器の特定が即犯人逮捕に繋がるものではないが、危険物を他者を害する目的で持ち歩いている存在がいるというのはあまりに恐ろしい。
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