【事前知識無し感想】映画ダイバージェント【前半と後半が噛み合わない物語】
- 2014/07/17
- 17:58
ダイバージェント観てきた。
本当は「トランセンデンス」を観る予定だったが、上映時間に間に合わなかったのでこちらを。
なので原作知識や事前の情報なく観ることに。
なんていうか微妙な話だった。
というのも前半と後半で物語の主題が変わってしまっているからではないかと。
近未来のシカゴでは、人々は、無欲を司る「アブネゲーション」、平和を司る「アミティ」、高潔を司る「キャンダー」、博学を司る「エリュアダイト」、勇敢を司る「ドーントレス」の5つの共同体のいずれかに振り分けられていた。主人公のベアトリス・"トリス"・プライアーはそのいずれにも属さないダイバージェント「異端者」とみなされてしまう。その判定を受けて間もなく、完璧であるかのように見えていた世界に潜んでいた「邪悪」が姿を現し始める[7][8]。
あらすじに描いてある通り、物語は近未来のディストピアを舞台に主人公がその体制に立ち向かうことがメインとなっている。
・・・ように見える。
しかし実際の映画では前半部分ではその予感を感じさせるだけで、基本的には「無欲」から「勇敢」へと移籍し、そのグループの中で自分の居場所を作っていくことがメインとなっている。
主人公は自分が「異端者」であることに悩んではいるものの、それは明確な形の害意ではなく、漠然とした将来への不安といった程度に抑えられしまっている。
「勇敢」の仲間達は基本的には気の良い連中であり、その中に溶け込んでいくことで社会に居場所を作っていく主人公の充実感はとても身近に感じられる。
だがそこに後半への布石である「勇敢」上層部の悪役っぷりが混ざってしまっているため、主人公が所属する組織がいまいち魅力的であるようには思えない。
そのため社会から弾かれることに不安を抱く主人公の気持ちに同期し切れない。
社会から弾かれる恐怖は大抵の人が理解できるだろうが、それが画面の向こう側の出来事となると観客にとっては他人事になる。
つまり「こんなところさっさと出て行けばいい」と無責任に主人公に期待してしまうのだ。
こういう話の組み方をした以上、普通なら待ち受けるのは「組織に完全に同調し切れない主人公故の戦い」だ。
たとえば仲間達と考え方が合わなくなってくるとか、組織の行動に疑問を抱いてしまうなど。
しかし、この作品ではそういう部分は全く描かれない。
なにしろ主人公は組織の新人としてずっと訓練しているだけで、実際の「勇敢」の活動には一切関わらないまま終わる。
この組織や社会が正しいのか否かと疑問を抱く機会すらない。
仲間達も人間的な仲違いや擦れ違いはあっても、「異端者」と「勇敢」での考え方の違いなどは明確には描かれない。
気の良い友人は最後まで善人である。
唯一、「勇敢」達を操る薬を投与されても「異端者」は操られないという設定があるが、そこに明確な理由付けはなく単なる主人公が逆転を始めるための切っ掛け程度にしか使われていない。
そして実際の映画の後半で何が起こったかと言えば、主人公と全く関係のないところで計画されて発生するクーデターである。
この世界の政治を主導しているのは元々主人公が所属していた集団である「無欲」なのだが、「博学」と「勇敢」が結託して政権を奪取しようとクーデーターを起こすのだ。
しかも「勇敢」は上層部が兵士達を薬で操って、感情なく命令を効く兵士に変えて行動を起こす。
・・・主人公が何かするでもなく勝手にディストピア崩壊しちゃったよ!?
そこは「勇敢」全員が自主的にクーデターを参加する中、「異端者」である主人公だけは反抗するとか!
「異端者」である主人公が周囲を納得させようとするとか、元仲間達から襲われる展開になるとか!
そういう方向に話が進むもんじゃないの!?
あとはその兵士達を操っている装置を破壊するために主人公が頑張るパートに雪崩れ込むのみだ。
最終的に事件を解決した主人公は恋人と一緒に壁に囲まれたシカゴから列車に乗って脱出する。
その列車には主人公の兄と、恋人の父親と、なぜか敵に協力していた「勇敢」の仲間も乗り込んでいたはずだが、最後のシーンには一切映らないので一緒に脱出したかは定かではない。
そして主人公が街を出て行く動機もいまいち分からない。政府の一番偉い人間である恋人の父親は生きているし、そもそも社会秩序を守るための決まりも「博学」と「勇敢」が暴走したことですでに破壊されている。
はっきり言って、主人公が壁の内側の世界を捨てて新天地を目指す理由が分からない。
一応、クーデーターの関係者である「勇敢」上層部は生き残っているっぽいので、それから逃げるという理由はあるのかも知れないが。
だが単に最初の方に観客が期待した「このディストピアを出て行く」という期待を、形だけ踏襲したようにしか見えないのが実際だ。
前半に丁寧に主人公が組織に馴染んでいく様を描いている割に、それと後半のクーデターパートが殆ど係わり合いがなくてチグハグとした印象が残った。
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- 2014/10/07(00:44)
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