ターンエーの癒し
- 2007/06/08
- 23:50
ターンエーの癒し 富野 由悠季 (2000/05) 角川春樹事務所 この商品の詳細を見る |
著者=富野 由悠季
出版社=角川春樹事務所(ハルキ文庫)
すいません。風邪ひいてました。
布団の中でこの本を読んでいるのは、果たして健康なのか不健康なのか。
機動戦士ガンダムの監督として有名な富野由悠季さんがブレンパワード、∀ガンダムを製作中に考えていたことなどを纏めた本。
2002年には文庫版が出ていて、私が読んだのはそちらの方。
「最近の若いやつは!」とか言われると、富野さんが駄目だと言う若いオタクである私には、どうしてもそういう部分ばかりが頭に残ってしまって「なにくそ!」と思ってしまうのは仕方がないではありませんか!
そんなわけでブツブツと文句を言いながら読んでました。
私にはどうにもこの本は言いたいことをぐっと我慢して、最大限気を使って言葉をオブラートに包んで書いているように思えて仕方ない(両親に関する話などは遠慮の少ない分面白かった)。
実際そうだろうと思う。
そして矛盾が凄い。
前半では「変態的なものは隠せ!」と言ったが、後半では「宝塚は変態的だがそれを日常と同化させている大阪は凄い!」と言ったりする。
それを読んで私程度だが「若い人だな」と思う。
作家やらが駄目になるのは一つの意見に拘泥するからだと私は思っているのだが、富野さんはそうならず常に色々なことを考え続けている。
この本を出した時点で58歳。これは凄いことだ。
それにしても気になるのは彼が本書の中で∀ガンダムをずっと「普通の人向け」と言っているところである。
「普通の人向け」……これは一体何を意図しているのだろうか。
もし「普通の人にも受ける」という意味で言うのなら、∀ガンダムは少なくとも無しではないだろうか。
もし私が普段アニメなど観ない人間に、どうしてもガンダムというコンテンツを薦めなければならないとしたら「∀ガンダム」は選ばない。
「機動戦士ガンダム」……いや絵柄が古過ぎる。
恐らく相手が若い人ならガンダムW辺りを薦めると思う。
恐らく彼が言っている「普通の人」というのは、そういったことではないのではないだろうか。
何ていうか私達の世代の言葉での「オタク」の内には含まれるが、富野さんが口にする意味での「オタク」の範疇には含まれていない相手を想定しているように思えてならない。
日本のテレビアニメ創成期から関わっている人間の中で、現在も精力的に活動していて、更には私達に比較的正直に言葉を投げかけてくれる相手というものは少ない。
そういった人間の言葉を聞けるという意味だけでも、この本を読む価値は十分にあるのだと思う。