教科書が教えない歴史
- 2006/01/24
- 04:30
教科書が教えない歴史 藤岡 信勝、自由主義史観研究会 他 (1996/08) 産経新聞ニュースサービス この商品の詳細を見る |
著者=藤岡信勝、自由主義史観研究会
出版社=産経新聞ニュースサービス
日本の歴史教育は自国に嫌悪感を持つように仕向けられている。まずは外国から押し付けられた歴史観から脱出することが必要である。
しかし、単純に戦争などで日本は少しも悪くなかったとするのは、単に今までの自虐史を裏返しに過ぎず、本質的には同じものである。
自由主義史観の立場では、あくまで実証的な歴史研究の成果を重視する。
結論をあらかじめ決めずに、自由な視点から歴史を見ていく。
これがこの本の冒頭に書かれている著者の藤岡信勝氏のこの本に対する説明である。
…正直な話、この冒頭文さえなければそれなりに楽しんで読むことが出来たのだ。
残念なことにこの本は藤岡氏自身が自虐史の単なる裏返しであると説いた、日本を善として戦争などを全肯定する「善玉史観」にそのまま陥っている。
とりあえず、まったく日本国や日本人の行動を悪としない。日本人同士がぶつかる話でも心情的に味方しやすい人物に主眼を置くことで、日本を悪とすることを徹底的に避けている。
つまり、この本はタイトルから想像されるような「教科書では教えない歴史の真実を暴く」という類の本では無く「日本人ちょっと良い話」なのだ。
何しろ「黒船来航」から始り、「特攻隊員達と懇意にしていた食堂のおばちゃんの話」で締められるのである。
彼女が私財を投げ打って少年達の世話をしていたのは確かに美談かも知れないが、そりゃそんな話を教科書で教えるわけがない。つーか、そもそももう歴史ですら無い。
後半になるにつれて「日本万歳」が鼻に付くようになってきたが、読み物としてはそこそこに面白かった。
物語形式になっているので(それがこの本の中立性を損なっている原因の一つではあるが)サクサク読むことが出来る。
この本に書かれていることを正解ではなく意見の一つだと理解して読むことが出来るのなら、歴史入門書やトリビア本としてオススメ。