『仮面ライダー響鬼の事情』に突き付けられたモノ
- 2014/05/29
- 15:38
この本を取った時、下種な好奇心がなかったといえば嘘になる。
本書の題材にもなっている仮面ライダー響鬼。
普段特撮作品も見ない人でも『仮面ライダー』という名前は知っているだろう。『響鬼』はその長く続く仮面ライダーシリーズの一作である。
2005年に放送されたそれは、番組の外側で様々な『事情』が巻き起こった作品でもあった。
なんと29話を境に番組の責任者であるプロデューサーが交代、同時に話を考える脚本家も全て一新されるという滅多に起こらない事態になったのだ。
一年という長丁場であるヒーロー番組では、人気の低迷や玩具の売り上げによっては、途中で路線変更されることは珍しくない。
だがプロデューサーや脚本陣まで総挿げ替えするまでに至ったのは、少なくとも平成になってから始まったいわゆる『平成ライダーシリーズ』ではこの一作だけだ。
それを境に番組の雰囲気もガラリと変わったため、前半の作風が好きだったファンが番組の公式サイトに殴り込んだり、後半を担当したスタッフ陣を罵るなどした。
そこまで前のめりにならなかった者も、こんなことになった理由について活発に推察し合っていたのを覚えている。
本書は仮面ライダー響鬼製作に文芸担当として関わった片岡力氏により、番組終了から僅か2年後の2007年に発売された内側からの視点で描いた『仮面ライダー響鬼ができるまで』を描いた一冊である。
そう『できるまでを描いた』一冊だった。
本書には件のプロデューサー交代劇に関する暴露などはない。そもそも著作者である片岡氏自身が番組が放送される前に、文芸の仕事から降ろされているので知りようがない。
副題の『ドキュメント ヒーローはどう〈設定〉されたのか』が本書の内容であり、主題の『仮面ライダー響鬼の事情』は完全に自分のような人間を釣るための疑似餌でしかなかった。
完全にやられてしまった。このタイトルを考えた人間の豪胆さと商売勘には脱帽である。
私が本書を読んできて突き付けられたのは、一つの番組を作るということの大変さだ。
この『仮面ライダー響鬼』を作るには大きく分けて三つのチームが存在した。
設定やお話などの企画を実際に作る東映サイド。
番組を放送するテレビ局であるテレビ朝日サイド。
玩具などを製作販売するバンダイサイド。
その三つの勢力が意見をぶつけ合わせるだけでも大変だ。
最初は『非仮面ライダー』として始まった響鬼が、ある程度形が決まってきた段階でバンダイからの要請で結局仮面ライダーになってしまうなどの点にそれが特に顕著だ。
著者はこの内、東映サイドの人間であったがその内輪だけでも様々な意見のぶつかり合いがある。
無数のアイディアが出され、それを繋げることによって出てくる矛盾や穴を埋めたかと思えば、それが原因によってまた新たな穴が開く。
そしてようやく完成したものを、それでもまだ足りぬと練り直す。
そんな気が遠くなる作業を繰り返して、一つの作品がブラッシュアップされていく姿は感動的といっても良かった。
もちろん、私自身作品作りをする上では似たような作業をしている。
しかし、それはあくまで脳内で完結するもので、外に明確な形で出力はしていない。
奇しくも現在書いている作品の中で、終盤になってもっとこうすれば良かった、この部分が物足りないと思う部分が出てきている現状である。
これが最初から彼らのように綿密なブラッシュアップをしていれば避けられたのではないかと思うと悔しい。
本書を読んで私は背筋を正される想いがした。
本書には件のプロデューサー交代劇に関する暴露などはない。そもそも著作者である片岡氏自身が番組が放送される前に、文芸の仕事から降ろされているので知りようがない。
副題の『ドキュメント ヒーローはどう〈設定〉されたのか』が本書の内容であり、主題の『仮面ライダー響鬼の事情』は完全に自分のような人間を釣るための疑似餌でしかなかった。
完全にやられてしまった。このタイトルを考えた人間の豪胆さと商売勘には脱帽である。
私が本書を読んできて突き付けられたのは、一つの番組を作るということの大変さだ。
この『仮面ライダー響鬼』を作るには大きく分けて三つのチームが存在した。
設定やお話などの企画を実際に作る東映サイド。
番組を放送するテレビ局であるテレビ朝日サイド。
玩具などを製作販売するバンダイサイド。
その三つの勢力が意見をぶつけ合わせるだけでも大変だ。
最初は『非仮面ライダー』として始まった響鬼が、ある程度形が決まってきた段階でバンダイからの要請で結局仮面ライダーになってしまうなどの点にそれが特に顕著だ。
著者はこの内、東映サイドの人間であったがその内輪だけでも様々な意見のぶつかり合いがある。
無数のアイディアが出され、それを繋げることによって出てくる矛盾や穴を埋めたかと思えば、それが原因によってまた新たな穴が開く。
そしてようやく完成したものを、それでもまだ足りぬと練り直す。
そんな気が遠くなる作業を繰り返して、一つの作品がブラッシュアップされていく姿は感動的といっても良かった。
もちろん、私自身作品作りをする上では似たような作業をしている。
しかし、それはあくまで脳内で完結するもので、外に明確な形で出力はしていない。
奇しくも現在書いている作品の中で、終盤になってもっとこうすれば良かった、この部分が物足りないと思う部分が出てきている現状である。
これが最初から彼らのように綿密なブラッシュアップをしていれば避けられたのではないかと思うと悔しい。
本書を読んで私は背筋を正される想いがした。
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