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毎度馬鹿馬鹿しいお話を一つ。
ある所に底がないと言われる井戸があったそうな。
ある時、その噂を聞きつけた二人の男が、それが本当が確かめるためにやってきた。
「おい、宇津木。ここがそうなのかい?」
「ああ、噂によるとこの井戸は地獄まで通じているそうだよ」
言われて見てみれば井戸の奥は暗くて底まで見渡せない。なるほどこれはかなり深い井戸のようだ。
「はんっ、どうせタダの空井戸だろうよ」
「確かめてみれば分かる話さね。じゃ、庄吉っちゃん、ちょっと降りてみちゃくれないか」
「……いや、待て待て待て待て。なんで俺が降りなきゃいけないんだい。先に調べようと言い出したのは宇津木じゃないか」
「もし本当に地獄に通じていたら怖いじゃないか」
「バカヤロウ。だったら尚更俺に行かせようとするんじゃねぇよ! ……ほら、ここに石がある。これを投げ入れてみればいい話じゃないか」
「お、庄吉っちゃん冴えてるねっ」
「当たり前よ。お前なんかと一緒にするんじゃないよ……あらよっ」
ほいっと石を投げ込んでみる。
ひゅーーーーーーーーーーーーーー……
・・・・・・・・・
・・・・・・
「……音がしねぇな?」
「…やっぱり地獄に通じてるんじゃ――」
「馬鹿言っちゃいけねぇよ。きっとどっかに引っかかったんだ。そらっ、もう一個放り込んでみよう」
二つ目をほいっ。
ひゅーーーーーーーーーーーーーー……
・・・・・・・・・
・・・・・・
「……なぁ、庄吉っちゃん。やっぱり――」
「いやいやいやいやいやいやいやいやいや、馬鹿言っちゃいけねぇ。馬鹿言っちゃいけねぇよ。
地獄に通じる井戸なんてあるもんかい。……よし、宇津木。お前ちょっと行ってどうなってるか見て来い」
「な、なに言ってんだよ。行くなら庄吉っちゃんが行ってくれよ!」
「もし本当に地獄に通じてたら怖いじゃねぇか!」
「だったら尚更俺を行かそうとしないでくれよ!」
「――ええい、鬱陶しい! 男なら勇気出して行って来い!」
「あ、こら、やめてくれよ。押さないでくれよ!」
「大丈夫だ! ここに来ることは誰にも言ってない!」
「あっ! 殺す気だね! 俺を殺して完全犯罪にする気だね! …落ちる落ちる落ちるっ!」
『あいてっ!?』
・・・・・・・・・・・
「……おい宇津木。お前なんか言ったか?」
「……いいや。庄吉っちゃんこそ何か言わなかったかい?」
押し問答は一時停止。二人がそっと井戸に向かって耳を澄ませていると、
『いたっ! また降って来やがった!』
・・・・・・・・・・・
「……声がするね庄吉っちゃん」
「……声がするな宇津木」
井戸の底の声がまるで地獄からのもののように響いてくる。
『まぁたぁ近所のガキか!? いい加減にせんと引きずり込むぞ!!』
ぞわぞわぞわぞわぞわっ
何かが井戸の壁を駆け上ってくる!
「っでたーーーーーーーーーーーーーーー!?」
二人の男は一目散。脱兎の如く森を抜け、家に帰ると布団を被って朝まで震えたそうな。
さて、話はこれにてお終い。
えっ、井戸の中はどうなっていたのかって?
そんなもの落ちない話なのですから分かるわけがありません。